ステップアップの大きな壁

多くの企業は、派遣社員から正社員への契約変更に良い顔をしない。その理由としては、正社員として契約をすると企業が支払わなくてはいけない金額が増えるからだ。

派遣社員の場合、社会保険や雇用保険の支払いはすべて派遣会社が行なう。そのため、正社員として契約をすることでそれらの支払いを雇った企業が行わなければいけなくなり、支払う費用が正社員にする前より多くなってしまうからだ。

また、派遣社員は契約期間が短い場合、適用する保険が国民健康保険ではなく「日雇特例被保険」を利用することになる。この保険は日雇いや派遣など短期間の仕事をする労働者に対して適用する保険制度のことであり、加入する人の条件は「日単位で雇用される労働者」「雇用期間が2ヶ月以下の短期労働者」「雇用期間が4ヶ月以下の季節労働者」となっている。

またこの保険の特徴としては「自分で加入手続きをして保険料を支払うこと」にある。契約にある労働の開始日から5日以内に、労働者自身が住んでいる地域の日本年金機構に訪れて加入手続きを行うことが必要となる。後は自動振込式などにして保険料を日本年金機構に支払っていく。

これが正社員になると、無期契約になり、雇用主が労働者の保険関係を支払わなければならなくなる。これが一人や二人でなく数十人になると金額が大きくなり、影響も大きくなるのだ。そのため、企業はなるべく正社員を雇いたくないというのが正直な気持ちだろう。そういう背景がある中で正社員として雇ってもらうためには、その金額分払ってでも会社に在籍してほしいと企業に思わせることが重要なのだ。